函館ハリストス正教会

正教会読み物 ~ 祈りについて(1)

いつ祈るべきか

この問いに対して、使徒ペトルは「絶えず祈れ」(フェサロニカ前書5;17)と答えており、神学者グリゴリイは「神のことを、呼吸するよりも頻繁に想え」と答えている。

あらゆる罪は、人間が神のことを失念している時に起こる。しかし、一日二十四時間絶えず神のことを想う気力を保持できる人は少ない。

朝、起床した時、直ぐに慌ただしく一日の予定を思いめぐらすのではなく、暫くの時間、静かな思いを主・神に捧げ、今日一日の前途に対して主・神の祝福を仰ごう。

昼間は、体調が悪い時、誰かとうまくいかない時、全てが順調な時など、遭遇するあらゆる状況において自分の思いを主・神に向けよう。自分の思いを悪魔に渡すようなことがあってはならない。

夜、就寝前に過ぎ去った一日を振り返り、主・神に感謝すべきこと、痛悔すべきことを想い、夜の眠りに対して祝福を仰ごう。

このようにして毎日を送り、自分が主・神の前を歩む者であることを自覚する人の人生は充実し、充満している。

しばしば人は、「忙しい」ということを祈らない理由として挙げる。確かに、今から10世紀以上前、聖師父の時代、人々は現代人のようなリズムで生活していなかったかもしれない。しかし現代人にも、そのような生活のリズムの中に「小休止」を見出すことはできる。電車を待つ間、待ち合わせの相手を待つ間、歩いている間、…。これらの時間に「主、憐れめよ」とつぶやくことは、既に「祈り」である。

しかし、自分の人生にこれらの「小休止」があることを認めながらも、なお、これを祈りのために使おうとしない人、使えない人がいる。このような場合、祈らない理由は「忙しい」、「時間が無い」のではなく、「祈りたくない」、「祈れない」のだということを素直に認めなければならない。

ここで確認しておかなければならないことが一つある。それは、祈りとは、そもそも気分に影響されてはならないということである。言い換えれば、祈りとは気が向いた時に行うものではないのである。

アトスの克肖者聖シルアンは「祈り ―― それは血を流すようなものである」とさえ言っている。つまりこれだけの聖人においてさえ、常に祈るためには血を流すような努力を自分に強いなければならないのである。祈りは霊の労働である。祈りたくない自分を祈りに向かわせる努力、これは時として尋常ならぬ力を要するが、その報いは必ず主・神より降る。

従って、“祈れない自分”が居ることに気が付いても、決して落胆したり、困惑したりする必要はない。これは主・神が新しい試練を自分に与えたのだと理解し、この試練を乗り越えるべく努力すれば良いのである。

そして自分の生き方が、祈祷書に記されている祈りの言葉と一致するように、急がず慌てず誠実に祈ろう。(祈りとは祈祷書のノルマ〔ページ数〕をこなすことではない)。

教会での祈り

20世紀の有名な神学者である長司祭ゲオルギイ・フロロフスキイは次のように言っている。

正教会信徒の祈りが全く個人的な孤独なものであることは有り得ない。たとえ一人、自分の部屋でドアを閉めて祈っていても、ハリスチアニンは「教会」という主ハリストスの体の一部なのである。私たちがそれを実感することのできる場は、教会での公祈祷である。

教会はしばしば舟に譬えられる。この舟の中に全てのハリスチアニンが乗り込んでおり、皆が一緒に神の国に向かって進んでいるのである。

昔のフィバイダの砂漠の隠遁修道者のように一人でこの世の荒波を渡り、神の国に入ることができる者は非常に稀である。彼等は、聖神°生活において練達した者であり、そのようにこの世を渡ることを主・神から祝福された者である。

多くの人にとって、神の国に入る確実な道は、教会において兄弟姉妹(けいていしまい)と共に祈ることである。何故ならば、正教会の聖堂における祈祷は、二千年の経験と伝統によって、人間の五感全てに訴え、祈りにおいて怠惰な人間の内にも祈る心を育むようにできているからである。

聖堂での公祈祷に参祷するときは、できれば、何らかの参考になる奉神礼書を求め、時間のある時にあらかじめ学んでおく必要がある。正教会の教えを表す独特な言葉を理解し、聖堂で何が行なわれており、それが何を意味するのかを理解することによって、今まで気が付かなかった聖神°的な(霊的な)世界が自分の前に開けてくる。

「地上において神の国のことを思わなかった人間が、死後、神の国に入ることは無い」と聖師父たちは言っている。洗礼機密は、信徒として聖神°生活(信仰生活)を送るための第一歩であるが、それで完結したわけではない。神が造られた見ゆると見えざる世界を正しく理解するためには、多少の努力が必要なのである。(次号に続く)

(函館ハリストス正教会報2011年10月・11月号より)

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