函館ハリストス正教会

正教会読み物 ~ 教会の鐘

教会の鐘の役割

教会の鐘の音は、教会生活の一部であり、この場所において信仰が生きていることの証であります。
正教会は、教会の鐘についてどのように教えているのでしょうか?
その基本的な理解のために『教会の鐘のウスタフ(規則) 〔ロシア正教会出版局発行 2005年〕』という教書を開けると、次のように書いてあります。

教会の鐘の音は、以下の目的のために必要とされる。

  • 聖堂において祈祷が始まることを信徒に知らせるため。
  • 聖堂において行なわれている祈祷の中で重要な場面(例:聖変化)が行なわれている場合、それを聖堂の中にいる者、及び聖堂の外にいる者に知らせるため。
  • 主・神の恩寵と祝福が込められた教会の鐘の音が信徒の敬虔な気持ちを深め、信仰を強くし、魔鬼の誘いを退けるため。

祈祷の最初に鳴らされる鐘の音は、「これから聖堂において祈祷が始まります。皆さん、教会へ行きましょう。」という意味ですから、祈祷の開始と同時ではなく、数分~数十分前に鳴らされるのが普通です。どのくらい前から何回に分けて鐘を鳴らすのか、ということについて、前述の教書では、「各教会、各修道院の伝統、及び主管または司祷者の祝福に従う」としています。

 

鐘打者の役割

鐘を鳴らすことを教会から祝福された信徒を「鐘打者(ロシア語でзвонарь(ズヴァナーリ))と言います。鐘打者は、鐘楼に昇る前(または鐘を打つ前)に、毎回神品の祝福を得てから行ないます。

鐘打者が、鐘打において気を配らなければならないこと、それは教書の中に次のように書かれています。

「聖神°性、 響きの心地よさ、 中和(極端に走らないこと)、 頃合いの見計らい方、 奉神礼の進行具合との息の合った正確な連動」。
これを読むと、鐘打者に求められていることがどういうことなのか良くわかります。
この中に「奉神礼の進行具合との息の合った正確な連動」とありますが、例えば日本でも多くの教会で行なわれている聖変化の場面での鐘打があります。
この時の鐘打は、12回(多くの教会で“12回”を目安としています)打てば良いということではなく、鐘打の鐘の音が聖変化の瞬間にかかっていることが重要です。速いテンポで12回打つと、聖変化の場面にさしかかる前に鐘打が終わってしまうこともあります。

 

埋葬の鐘打

通常、鐘打が行われる祈祷として、聖体礼儀以外の公祈祷、また婚配式、埋葬式などがありますが、ここで埋葬の鐘打について正教会の教えを見てみましょう。正教会の奉神礼の深さに改めて触れることができます。

「埋葬」の祈祷には二種類あります。一つは、一年に一度だけ、聖大金曜日に行われる主ハリストスの「眠りの聖像」の埋葬。もう一つは、神の僕婢(人間)の埋葬です。
神の僕婢の埋葬式では、棺が聖堂から出て墓地へ向かう時、鐘楼では「小さな鐘から大きな鐘へ、一つひとつの鐘を一回ずつ打ち、最後に全部の鐘を一度に鳴らす」というサイクルを一サイクルとして、これを繰り返します。人間が小さな赤ちゃんとして生まれてから段々と成長し、大きくなって、最後にこの世での生を全うしたことを表すために、全てが終わったと言う意味で、全部の鐘を同時に一度打って、区切りとします。
主ハリストスの「眠りの聖像」の埋葬では、十字行の間、鐘楼では「大きな鐘から小さな鐘へ、一つひとつの鐘を一回ずつ打ち、最後に全部の鐘を一度に鳴らす」というサイクルを一サイクルとして、これを繰り返します。人間の埋葬の時の逆の順番になります。
神性と人性の二つの性を持つ主ハリストスが、この世に神として籍身した時は、赤ちゃんとしての人性を私たちは見るのですが、段々と成長するにつれて人性よりも神性が顕れ始めます。この神性の顕れとその拡大を「小さな鐘から大きな鐘へ」というプロセスで表すのです。
いづれの場合も、一つひとつの鐘を一回ずつ打つ際には、ゆっくりと打ちます。前の鐘の響きの余韻が完全に消え去ってから、一定の間隔を見計らって、次の鐘を打ちます。
これは、教会に複数(大中小)の鐘があることを前提とした話ですが、一つの鐘しかない教会でも、このような意味を知って、このことを思い起こしながら鐘打すると、前述の鐘打者に求められる「聖神°性」の意味で大きな違いがあるかと思います。

 

複数の鐘

教会の鐘の数について、規則はありません。ただ前述の教書を見ると、鐘の数の“上限”が提示されているのは、いかにもロシアらしいところです。
“上限”とは、例えば「大鐘は1個~5個まで」とされているのですが、この意味は、聖体礼儀の始まりを表す時に打つ大鐘と埋葬式の時に打つ大鐘、その他のケースでどの大鐘を使うのか、大鐘の使い分けをするためにこのような記述が現われます。
函館正教会の場合は、大鐘は一個です。鐘打するすべてのケースにおいて同じ大鐘を使っているということになります。
また、複数の鐘は、「大小」という二つのグループ分けではなく、「大中小」という三つのグループ分けで把握されます。
函館正教会の場合は、左手を使って鳴らす二つの鐘が「小」、右手を使って鳴らす三つの鐘が「中」、足で鳴らす一つの鐘が「大」となります。これは、祈祷の様々な場面において、複数の鳴らし方のバリエーションを持つ場合に必要となってくる便利な考え方です。
教会は、他の全ての聖器物と同じように、鐘についても記録を残しておきます。どこの鋳造所で、いつ作られたのか、重さ、表面の模様、文字、音色の特徴などについての記録です。函館正教会の鐘は、1983(昭和58)年から翌年にかけて三重県の「中川梵鐘」で鋳造・献納されました。大きさは下記の通りです。

  大きさ 直径 重量
1 940mm 500kg
2 490mmと517mmの間 85kg
3 450mmと468mmの間 65kg
4 418mmと436mmの間 55kg
5 305mm 25kg
6 248mm 16kg

 

(函館ハリストス正教会報2016年6月・7月号より)

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